東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2544号 判決
証拠を綜合するときは、控訴人は埼玉師範学校を卒業したのに対し被控訴人は小学校を卒業しただけであり、控訴人の性質は内攻性であるのに対し被控訴人は勝気にして多弁であること、このような教育程度や性質の相異る男女が婚姻生活を円満完全に営むためには特別の考慮と工夫を必要とする場合があり、本件当事者はあたかもこの場合に該当するものと認められるのであるが、控訴人は年長でもあり教育程度も高いのであるから、被控訴人を或は指導し或は激励して婚姻生活を円満完全に営むため相当長期間に亘つて努力し工夫すべきものであるに拘らず、単に「性格の相違」に藉口して婚姻後二、三年にして早くも離婚を口にし、昭和十五年一月一日から昭和二十年八月八日までの間に三子を儲けた間柄であるのに、普段何かにつけ別れたい別れたいと云つていたこと、前認定の昭和十七年頃と昭和十九年頃近親者数名を交えて控訴人被控訴人間の調整について話合つたというのも控訴人が強く離婚を希望したことに端を発したものであること、控訴人が自ら「自分は被控訴人から逃避しているのに拘らず、被控訴人は執念深く離れようとしない」(原審における控訴本人尋問の際の供述)と云つている通り局面打開の積極的意思を有つていないことを認定することができる。又当審証人森紀旦の証言ならびに原審と当審における被控訴人本人尋問の結果によれば、被控訴人は控訴人が被控訴人の許を去つた後長期間にわたる別居生活に堪えて貞節を守り、控訴人からの仕送りと手内職等による収入とによつて生計を維持し、控訴人との間に儲けた三人の子女を養育しながら控訴人が一日も早く復帰することを希望してしていることが認められる。(中略)
控訴人と被控訴人との結婚生活は現在破綻に瀕しているといつてもいい。しかしその原因は控訴人のわがままに基因するものであると認められる。かような夫婦生活破綻の原因を与えた者は自らそれを理由として配偶者の意思に反して離婚を求めることは許されないものと解するのを相当とするから控訴人の本訴請求は認容するに由なきものである。
(奥田 岸上 下関)